学力トップクラスで喜ばない日本

今更ながら、学力低下について私見を書いてみます。
一応、Wikipediaで教科教育(数学教育、理科教育など)を加筆している立場から。


最近は下火な学力低下論争。
ネットを中心にいろいろ眺める限りでは、「一応今は大丈夫だけど、今のままでは学力が低下しそう」とか、「学力そのものは高いけれど、意欲とか応用力に課題あり」といった論調が多いようにおもいます。
例えばこれ。
http://allabout.co.jp/children/hsexam/closeup/CU20081215B/index2.htm

一方、リンク切れが多いので出典を上げにくいのですが…中には「今にも生徒の学力は低下しそう」とか、「もうすでに学力が低下している」といったやや極論じみた論調も見られたりします。

いずれにせよ、現状に対しやや悲観的な主張が多いのが現状と言えるかと。



ここで、一つ素朴な見解を提示してみたいと思います。


学力の国際比較でトップクラスになることって、すごいことじゃないの??


最近、とある数学の先生から聞いた話です。

授業で中3相手にPISAの話を持ち出した時、その先生の予想は「今のままじゃまずい。他の国に負けないくらいもっと勉強しよう!」だったそうですが、実際の多くの生徒の反応は「(自分たちと同じ)日本の中学生の学力はこんなに高かったんだ。すご〜い!」だったそうです。

実際、PISAの調査では
数学リテラシー 1位→6位(→10位)
科学リテラシー 2位→1位(→5位)
読解力     8位→14位(→15位)
※ 調査年は順に、2000年→2003年(→2006年)

最近、PISA2006の結果が公開されたために、学力低下の危機意識の正しさを裏付ける結果となっていますが、学力低下が言われた2003年時点では分野の差はあれトップクラスの学力を持っていたワケです。当時なされた「一応今は大丈夫だけど、今のままでは学力が低下しそう」とか、「学力そのものは高いけれど、意欲とか応用力に課題あり」といった主張はそれ自体間違っていないものの、その側面を全面に押し出しすぎて「前よりは落ちてるし、このままだともっと落ちそうだけど、学力は高いぞ」という認識ができずにいた気がしてなりません。

思えば、最初の2000年の調査で数学1位、科学リテラシー2位だったにもかかわらず、今まで誰もそのことについてポジティブな評価をしようとしなかった。「学力低下問題」として盛り上がった頃でさえ、「学力が低下しそう(orしている)」とは述べても、「数年前まで、日本の生徒の学力は高かった」とは誰も述べようとしなかった。今までの議論は、そこまで言い切ってしまえるほど今までの議論は偏っていたような気がしてなりません。

現状に甘んじることなく上を目指すこと、課題を克服すること、それ自体は間違ってはいなけれども、現状の優れているところもきちんと評価しないと、いつまでたっても教育が良くはならないでしょう。本当にいいことをやってもダメ出ししかしないのだから、「ああでもない、こうでもない」と迷走を続けるだけではないのか。

少々まとまりに欠ける部分はありますけども、そんなことを思った次第です。

※参考:Wikipedia学力低下
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E5%8A%9B%E4%BD%8E%E4%B8%8B