ゆっくり文庫風『エジプト十字架の謎』Part1投稿あと語り #ニコニコ動画

先日、今年1月の動画『ローマ帽子の謎』の続編を投稿した。

 

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前回は年末年始の休みを使い3日程度で完成させたが、今回は難航した。

完結を見越してシナリオを作ったから?改変が多いから?それとも…。

いずれにせよ、Part1投稿までに約4か月を要した。

昔の動画『ゆっくり科学者列伝』(計7作+α)では最長でも2ヶ月。

そのことを想うと、長編作品ミステリーを動画化する難しさを痛感させられる。

同種の動画を作成されている方、そもそも原作を作られている方々に頭が下がる。

 

ただ今後も「文学にドライ」的な発信は続けるだろう。

コンテンツ作成に全力投球しているからと言って、他分野に対する敬意を欠く発言が許されていいとは思わない。かつてWikipedia執筆をしたり、科学系偉人の解説動画を作成した経験から心底そう思う。

 

 

【本編1:なぜ続編を作った?】

最大の理由は、前回の『ローマ帽子の謎』の反響が意外な形であったため、そのお礼としての意味が大きい。『ローマ帽子の謎』は問題編のみの「うっかり文庫」であり、だからこその反響という面がある。犯人が気になる的なコメントも多かったが、かといって解決編を作るのは、「うっかり文庫」としての魅力を損ねることになると考えた。

ならば、続編を作り、そちらで完結編までを作成しよう、そう考えたのだ。

そして、「うっかり文庫」として『ローマ帽子の謎』を作成した時に漠然と思ったのが、”うっかり文庫では大幅な改変ができない”ということ。

「うっかり文庫」は一部のみの制作が許容される代わり、”続きは原作を読んでね”で閉めることを余儀なくされる。大幅に変更し、作品内で完結させないまま”続きは原作で”だと、もはや原作との接点のない別物となる。それは視聴者にとってはもやもやが大きすぎるし、何より原作への敬意を欠く行為だと考えるのだ。

だから今回は、負担感が大きいものの全編を作ることにした。なぜ『エジプト十字架の謎』にしたかは後述する。

 

【本編2:『エジプト十字架の謎』の選択理由】

理由は3つ。

・投稿者にとって、エラリー・クイーンの作品で唯一幼少期に読んだ作品

エラリー・クイーンの作品内でも世間一般的な評価が高い作品の1つ

・動画化に当たり内容改変を余儀なくされる要素が多い

上2つのついては詳細は語らない。3つ目のみ補足する。

原作本のあらすじを読むだけでも、本作は”忠実な再現”には向いていないことがわかる。というのも、原作での殺害方法は”首を切断し、T字型の磔にする”だからだ。しかもこの殺害方法自体が結末に直結する。単純にグロテスクであるし、頭部しかないゆっくりで再現することも原理的に困難である。

ちなみに、私の動画ではTNTで爆殺され、顔の判別が不可になる”という形をとった。爆発物に”T”で始まるものを使用することで、”T”の見立ても成立する(やや専門的になるが)。宗教がらみのこの事件で爆弾を使うという設定に迷いはあったが、それを言うなら殺人事件を取り扱うこと自体が議論されてしかるべきだと思う。舞台となる1930年代アメリカについても調べ、少なくともこの頃のヨーロッパではTNTが使用されていることを確認済みである。

なお、これにともない、一部人物にTNT使用可能となるよう設定を変更した。詳細はキャスティングにも影響するためここでは省略。

完結編作成時に致命的な齟齬が出てこないことを祈る。

 

その他、Part1時点での主な変更点は以下。太字は後日追記項目(5/8)。

・物語開始はヤードレー教授との再会から。それ以前の物語は回想で。

・秘書ニッキー・ポーターが同行。ジューナは運転手フォックスの立場に。

・登場人物全員にフルネームあり。

リンカーンの妹へスター、隣人のリン夫妻、その他モブが未登場。

・原作でモブ枠の執事ストーリングスが容疑者の1人に昇格。

・アロヨ関係者で登場するのはクリング、ピート老人、ルーデン巡査のみ。

・クリングに元教師という設定が追加(実はTNT関係)。

 ・テンプル医師が検死役を兼ねたため死体発見時に出会う。大戦経験は原作通り。

・ブラッドの死体発見時刻が翌朝から当日の深夜に変更。発見者はヤードレー教授とジューナ・フォックス(原作はフォックスとリンカーン)。殺害にTNTが使われる設定上、爆音はごまかせないゆえの変更。

・ブラッド氏殺害時のアリバイ検証はエラリー訪問前に一通り終了する。内容も原作より簡略化。実はこの辺のシナリオ調整に一番苦労した。

・アイシャム地方検事が太陽教について無知(太陽教の説明を引き出すため変更)。

・太陽教についての全裸主義設定をカット。

・クロサックの身体的特徴を左足不自由→左耳ケガ(耳あて)に変更。ちなみに耳あては1930年代アメリカでは流通していない。

・メガラ到着が2日目に変更(原作は8日目)。

・メガラの一人称が「俺」。原作日本語訳は「私」か「僕」。原作で一人称「俺」があまりに少なくバランスを取る意味と、自前のクルーザーで旅行する男にしては紳士的すぎる原作設定への個人的違和感から。

・チェッカーの推理がPart1で完結。容疑者となったジューナ救済に使用。

 (原作同様に容疑者の絞り込み自体は行われる)

・ヤードレー教授別荘の家政婦として『ニッポン樫鳥の謎』のキヌメ、ジューナの保護者的立場として『フォックス家の殺人』のデイビー・フォックスが登場。

 

 

【本編3:今後について】

Part2以降の作成に邁進する。本業が忙しくなったためPart2は8月以降になる。

その関係上、Part1の続きを「おまけ」という形で流し、おまけ込みならPart1時点で犯人特定可能、という構成にしてある。本動画制作の趣旨と本業を両立しようと苦悩した結果なのでご容赦いただきたい。

ちなみに、Part2の書き出しはすでにTwitterで公開した。よろしければ。

 

 

【おまけ:キャスティングなど】※マニアックな言及に注意!

本作のキャスティングは以下。

 

今回は話の展開上のメイン人物に『東方輝針城』のキャラを充てた。具体的には以下。

わかさぎ姫・・・スティーブン・メガラ

赤蛮奇・・・アンドリュー・ヴァン

今泉影狼・・・ストーリングス

九十九弁々・・・マーガレット・ブラッド

九十九八橋・・・ヘレーネ・ブラッド

鬼人正邪・・・トマス・ブラッド

少名針妙丸・・・ジューナ・フォックス

堀川雷鼓・・・ジョナ・リンカーン

実は『ローマ帽子の謎』作成時点で、ジューナ役には針妙丸を充てるつもりでいた。原作でのジューナの立ち位置は留守番、原作のフォックスはいてもいなくてもよい(但し出番は多い)立ち位置のため、本作で両方カットしようとも考えた。

が、シナリオ作成中にジューナをフォックスのポジションに充てることを思いつき、現在の形となった。原作でフォックス(=ジューナ・フォックス)の殺人容疑は本編中盤まで引っ張られるが、本作ではチェッカーの推理を流用してPart1であっさり解決させることにした。

かくして『東方輝針城』総出演が実現。あとのキャラはそんなに迷わず起用。

なお、東方に詳しい方ならば、フォックスという名称で八雲藍を連想することを見越し、『フォックス家の殺人』のデイビー・フォックス役として登場させた。ジューナがジューナ・フォックスとなったことに違和感を抱く視聴者がどれだけいるかわからないが。

 

その他の登場人物の起用イメージはこんな感じ。

警察関係者(アイシャム、ヴォーン、テンプル)・・・三月精

太陽教関係者(ハラーフト、ローメン、クロサック)・・・神霊廟

アロヨ関係者(クリング、ピート老人、ルーデル巡査)・・・命蓮寺

ただし、クリング役の紅美鈴は『東方紅魔郷』、ルーデル巡査役のきょうこ(幽谷響子)は『東方神霊廟』のキャラ。クリング役にはのちの話の展開上”赤毛の東方キャラ”が望ましかったが、命蓮寺関係に赤い髪のキャラはいなかった。(5/8追記)

なお、この起用イメージは、ハラーフト役の物部布都、ピート老人役の雲居一輪が個人的なはまり役でこうなった。今思うとクロサックも割とはまり役。ちなみにハラーフトの名は翻訳によってはハラークト、ホルアクティと呼ばれることもある。

 

ちなみに、警察関係者に三月精を起用した理由はこの動画の影響。

『エジプト十字架の謎』と別の形で”T”も登場する。

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最後に、ヤードレー教授役は八雲紫一択だった。私の中でヤードレー教授は”正義のモリアーティ”で、本家ゆっくり文庫で八雲紫を充てているので。

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ただ、東方原作でエラリー・クイーン役の比那名居天子と仲が悪いのはご愛敬。